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交通事故の過失割合は誰が決める?納得できないときの4つの対処法

2026.10.27 弁護士コラム

事故の相手方の保険会社から、今回の事故は7対3でお願いしたいと言われた。こちらは止まっていたのに、なぜ3割も責任を負わなければならないのか。過失割合をめぐるこうした不満は、交通事故のトラブルのなかでもとくに多いものです。

過失割合は、受け取れる賠償金の額を直接左右します。それなのに、誰がどのような根拠で決めているのかを知らないまま、言われるがままに受け入れてしまう人が少なくありません。

この記事では、過失割合が決まる仕組みと、提示された割合に納得できないときに取れる4つの対処法を解説します。示談書にサインする前に、一度立ち止まって確認してみてください。

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過失割合とは何か

事故の責任を当事者間で分ける数字

過失割合とは、事故が起きた原因について、当事者それぞれにどれだけの責任があるかを割合で表したものです。8対2、7対3といった形で示され、数字が大きいほうが事故の主な原因をつくった側になります。

交通事故は、どちらか一方だけが100%悪いというケースのほうがむしろ少なく、多くの場合は双方に何らかの落ち度があったと評価されます。その落ち度の程度を数字にしたものが過失割合です。

受け取れる賠償金が過失分だけ減る

過失割合が重要なのは、自分の過失の分だけ賠償金が差し引かれるからです。これを過失相殺といいます。

たとえば損害額の合計が300万円で、自分の過失が2割と認定された場合、相手に請求できるのは300万円から2割を引いた240万円です。さらに相手側にも損害があれば、その2割分を自分が負担しなければなりません。相手の車の修理費が100万円なら、20万円を支払う計算になります。

つまり過失割合が1割動くだけで、受け取る額と支払う額の両方が変わります。損害額が大きい事故ほど、この差は無視できない金額になっていきます。

過失割合は誰が決めるのか

警察は決めない

意外に思われるかもしれませんが、過失割合を決めるのは警察ではありません。

警察は事故現場で実況見分を行い、事故の状況を記録しますが、これは刑事責任や行政処分を判断するためのものです。交通事故証明書にも過失割合は記載されていません。警察が現場でどちらが悪いかを口にすることがあっても、それは損害賠償上の過失割合とは別の話です。

実際は保険会社同士の話し合いで決まる

実務上、過失割合を決めているのは当事者双方の保険会社です。それぞれの担当者が事故状況を確認し、過去の裁判例を整理した基準をもとに話し合い、合意した割合が示談の前提になります。

ここで注意したいのは、保険会社は自社の支払いを抑える立場で交渉しているという点です。相手方の保険会社はもちろん、自分が契約している保険会社であっても、必ずしも自分に最も有利な割合を主張してくれるとは限りません。

もらい事故では自分の保険会社が交渉できない

さらに落とし穴になりやすいのが、自分に過失がまったくない事故です。信号待ちで追突された、駐車中にぶつけられたといった事故では、自分側の保険会社は示談交渉に関わることができません。

保険会社が示談を代行できるのは、自社が保険金を支払う立場にある場合、つまり契約者に過失がある場合に限られます。過失がゼロの被害者に代わって交渉することは、弁護士以外が報酬を得て法律事務を扱うことを禁じた弁護士法に触れるためです。

その結果、過失ゼロを主張する被害者は、相手方の保険会社と直接やり取りせざるを得なくなります。相手方が1割の過失を主張してきたとき、交渉のプロを相手に個人で対抗するのは簡単ではありません。

最終的な決定権は裁判所にある

話し合いで合意に至らなければ、最終的には裁判所が判断します。保険会社同士の交渉はあくまで裁判になった場合の見通しをもとに行われているので、裁判所の判断基準を知っておくことが交渉でも有利に働きます。

過失割合の基準になっている資料

保険会社も裁判所も、過失割合をゼロから考えているわけではありません。事故の類型ごとに基本となる割合を整理した基準があり、これをもとに個別の事情で調整しています。

もっとも広く使われているのが、東京地裁の裁判官らがまとめた別冊判例タイムズ38号という資料です。事故の状況を数百のパターンに分類し、それぞれの基本過失割合と修正要素を示しています。

代表的な類型の基本割合をいくつか挙げておきます。

  • 信号待ちで停車中に追突された:追突された側0、追突した側100
  • 信号機のある交差点で、直進車と対向右折車が衝突(双方青信号):直進車20、右折車80
  • 信号機のない同じ幅の交差点での出会い頭:左方から来た車40、右方から来た車60
  • 走行中の車線変更で後続車と接触:車線変更した側70、後続車30
  • センターラインを越えてきた車と衝突:越えられた側0、越えた側100
  • 駐車場の通路の交差部分での出会い頭:50対50

自分の事故がどの類型に当たり、基本割合がいくつなのかを知っておくだけでも、提示された数字が妥当かどうかの判断材料になります。

基本割合から数字が動く修正要素

基本割合はあくまで出発点で、事故の個別事情によって5〜20ポイント程度の加減が行われます。これが修正要素です。

過失が加算される主な事情には次のようなものがあります。

  • 著しい過失(脇見運転、酒気帯び、時速15km以上30km未満の速度超過、ハンドル操作の明らかなミスなど):10ポイント程度の加算
  • 重過失(酒酔い運転、時速30km以上の速度超過、居眠り運転、無免許運転など):20ポイント程度の加算
  • 進路変更や右左折の際にウインカーを出していなかった
  • 夜間や見通しの悪い場所での不注意

反対に、相手が児童や高齢者だった場合や、幹線道路を走行していた側については、その分だけ過失が軽く評価されることがあります。

保険会社の提示に納得できないケースの多くは、この修正要素が反映されていないか、逆に本来なら当たらない修正が加えられていることが原因です。次の章で説明する対処法も、基本的にはこの修正要素をどう立証するかという話になります。

納得できないときの4つの対処法

1. 提示された割合の根拠を確認し、修正要素を主張する

最初にやるべきなのは、相手方の保険会社に対して、その割合の根拠を具体的に示してもらうことです。どの類型を当てはめたのか、修正要素をどう評価したのかを書面で出してもらいましょう。

根拠が示されれば、こちらから反論すべきポイントが見えてきます。相手が速度超過していた、ウインカーを出していなかった、こちらは徐行していたといった事情があるなら、それが修正要素に当たることを指摘し、割合の見直しを求めます。

口頭でのやり取りだけでは記録に残らないため、主張は書面かメールで行い、相手の回答も文書で受け取るようにしてください。

2. 事故状況を裏づける証拠を集める

主張には裏づけが必要です。相手方が事実関係を争ってきた場合、証拠がなければ水掛け論で終わり、結局は保険会社の提示に押し切られてしまいます。

集めておきたい証拠は次のとおりです。

  • ドライブレコーダーの映像(自分の車のものだけでなく、相手や周辺車両の映像も確認する)
  • 事故現場や車両の損傷状況を撮影した写真
  • 目撃者の連絡先と証言
  • 周辺の店舗や施設に設置された防犯カメラの映像
  • 実況見分調書(人身事故として届け出ている場合、検察庁で閲覧・謄写できる)

このうち実況見分調書は、警察が現場で当事者立ち会いのもと作成した公的な記録で、事故状況をめぐる争いでは強い証拠になります。ただし物損事故として処理されていると作成されず、簡易な物件事故報告書しか残りません。ケガをしているのに物損扱いのままにしている人は、早めに人身事故への切り替えを警察に申し出ておくべきです。

防犯カメラの映像は一定期間で上書きされるため、心当たりがあれば事故から数日以内に保存を依頼してください。

3. 第三者機関に和解のあっせんを申し立てる

保険会社との交渉が平行線になったら、中立的な第三者に間に入ってもらう方法があります。裁判よりも手続きが簡単で、費用もかかりません。

  • 交通事故紛争処理センター:弁護士が無料で相談と和解のあっせんを行う。話し合いがまとまらない場合は審査に進み、審査会の裁定に保険会社側は原則として従う仕組みになっている
  • 日弁連交通事故相談センター:全国の弁護士会に窓口があり、無料相談と示談のあっせんを受けられる
  • そんぽADRセンター:損害保険協会が運営する窓口で、保険会社との間のトラブルについて苦情対応や紛争解決手続きを行う

とくに交通事故紛争処理センターは、審査の結果を保険会社が拒否できない一方で、被害者側は納得できなければ裁判に進める仕組みになっています。被害者にとって不利になりにくい制度といえます。

4. 弁護士に依頼して交渉や裁判を進める

証拠を揃えて主張しても保険会社が応じない場合や、そもそも交渉自体を負担に感じている場合は、弁護士に依頼するのが最も確実な方法です。

弁護士は判例タイムズの基準と過去の裁判例を熟知しているため、修正要素の主張を的確に組み立てられます。証拠の収集や実況見分調書の取り寄せも任せられますし、もらい事故で自分の保険会社が動けない場合の交渉窓口にもなります。

交渉で決着がつかなければ、そのまま裁判に移行できるのも弁護士に依頼する利点です。裁判では裁判所が証拠にもとづいて過失割合を判断するため、保険会社の一方的な主張が通ることはありません。訴額が小さい事故であれば、簡易裁判所の調停や少額訴訟という手続きも選択肢になります。

費用面については、自動車保険に付帯する弁護士費用の補償を使えるケースが多く、実質的な負担なしで依頼できる場合があります。加入内容を確認したうえで検討してみてください。

過失割合で不利にならないために事故直後にできること

過失割合の争いは、事故直後の対応で結果が変わることも少なくありません。現場での振る舞いとして押さえておきたい点をまとめます。

  • 相手方に対して、その場で自分の非を認める発言をしない
  • 事故状況について相手方と口頭で合意しない
  • 車両の位置関係、道路標識、信号、路面の状況を写真に残す
  • 警察を必ず呼び、事故状況を正確に伝える
  • 目撃者がいれば連絡先を聞いておく
  • ケガがあるなら当日中に受診し、人身事故として届け出る

事故直後は動転していて、悪くないのに謝ってしまう人がよくいます。その発言だけで過失割合が決まるわけではありませんが、相手方が有利な材料として持ち出してくる可能性は否定できません。事実の確認と記録に集中し、責任の有無については後で冷静に判断する姿勢が大切です。

過失があっても補償が減らない仕組み

最後に、過失割合が動かなかった場合の備えについても触れておきます。

加害者側の自賠責保険は、被害者救済を目的とした制度のため、被害者に7割未満の過失であれば減額されません。7割以上の重大な過失があった場合でも、傷害部分の減額は2割にとどまります。任意保険との交渉でどうしても過失割合が動かないときは、自賠責への被害者請求を組み合わせることで、受取額を確保できる場合があります。

また、自分の自動車保険に人身傷害保険が付いていれば、自分の過失分の損害はそちらから受け取れます。過失割合の争いを続けながら、実際の治療費や収入の減少分を先に確保する手段として知っておいてください。

まとめ

過失割合を決めるのは警察ではなく、当事者双方の保険会社による話し合いであり、最終的な判断は裁判所が行います。保険会社は判例タイムズの基準に個別の修正要素を加えて割合を算出しているため、提示された数字が絶対というわけではありません。

納得できないときは、根拠を書面で確認して修正要素を主張し、ドライブレコーダーや実況見分調書といった証拠を揃え、それでも動かなければ紛争処理センターなどの第三者機関か弁護士を通じて解決を目指すことになります。

過失割合は一度示談すると原則として覆せません。違和感を覚えたまま合意するのではなく、ここで紹介した順番で一つずつ手を打ってから判断してください。

代表弁護士 平田裕也

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

広島弁護士会所属/弁護士登録番号 第57063号

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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