高齢の母が歩行中に事故|高次脳機能障害で5級認定・約5200万円を獲得
「高齢で後遺障害の立証は困難」→5級認定・約5200万円
広島市中区の70代女性が歩行中の事故で高次脳機能障害を負い、ご家族の陳述と専門医の検査で後遺障害5級の認定を得て、約52…
70代女性/広島市中区
事例を読むcolumn
弁護士コラム
交通事故のケガで通院を続けていると、ある日突然、保険会社からこんな連絡が入ることがあります。
「そろそろ症状固定の時期ではないでしょうか。来月末で治療費のお支払いを終了させていただきたいのですが」
まだ痛みが残っているのに、どうして治療を終わらせようとするのか。そもそも症状固定という言葉を初めて聞いた、という人も少なくないはずです。
この記事では、症状固定の本来の意味と決め方、治療費を打ち切られたときにどう動けばいいのか、そして症状固定後にどんな補償を受け取れるのかを、順を追って見ていきます。保険会社からの連絡に慌てず対応するための土台として、ぜひ最後まで読み進めてみてください。
弁護士に相談することで、解決への道筋が見えてきます。
目次 [閉じる]
症状固定とは、これ以上治療を続けても症状が良くも悪くもならない、つまり医学的に改善の見込みがなくなった状態を指します。
ここで気をつけたいのは、症状固定と完治は別物だという点です。痛みやしびれ、関節の動かしにくさが残っていても、それが今後の治療で変わらないと判断されれば症状固定になります。症状が消えた状態ではなく、症状が残ったまま治療が一区切りつく段階、と考えたほうが実態に近いでしょう。
症状固定がこれほど重要視されるのは、この時点を境に、請求できる損害の種類がはっきり分かれるからです。
症状固定前に請求できるもの
症状固定後に請求できるもの
症状固定後の治療費は、原則として加害者側に請求できません。その代わり、残った症状について後遺障害等級認定を申請し、認定されれば後遺障害分の補償を受け取る、という流れに変わります。
言い換えれば、症状固定は治療の終わりであると同時に、後遺障害の手続きが始まる合図でもあるわけです。
症状固定の時期を判断するのは、あなたを診ている主治医です。保険会社の担当者ではありません。
保険会社が症状固定の時期を打診してくること自体はよくあります。ただ、それはあくまで保険会社側の見解であって、医学的な判断ではないという点は押さえておいてください。保険会社は支払う治療費を抑えたい立場にあるため、実際の回復状況より早めに症状固定を持ちかけてくる傾向があります。
主治医がまだ治療の必要があると考えているなら、保険会社に何を言われても、治療を続ける正当性は十分にあります。
症状固定までの期間はケガの内容や個人差で大きく変わりますが、一般的な目安は次のとおりです。
保険会社がむちうちの治療費を3か月前後で打ち切ろうとするのは、この目安をひとつの根拠にしているためです。とはいえ目安は目安であって、3か月で必ず症状固定になるわけではありません。
症状固定の時期を早めてしまうと、次のような不利益につながるおそれがあります。
とくに後遺障害等級認定は、一定期間きちんと治療を続けたうえで、それでも症状が残ったことを証明する手続きです。通院期間が短いと、そもそも症状が残るほどのケガだったのかを疑われ、認定のハードルが上がってしまいます。
保険会社からの治療費の打ち切りとは、正確には一括対応の終了のことです。
一括対応とは、本来は加害者の自賠責保険と任意保険で別々に支払われる治療費を、任意保険会社がまとめて立て替え、病院に直接支払ってくれる仕組みを指します。被害者は窓口で治療費を払わずに済むので助かる制度ですが、これはあくまで保険会社側のサービスであって、法律上の義務ではありません。
だからこそ、保険会社は自社の判断で一括対応をやめることができます。治療費の打ち切りとは、保険会社が病院への直接払いをやめると宣言しただけのことで、あなたが治療を受ける権利が消えたわけでも、その後の治療費を請求できなくなったわけでもありません。
ここを理解しているかどうかで、打ち切りの連絡を受けたときの落ち着き方がまったく変わってきます。
なお、打ち切りの打診が来やすいタイミングにも一定の傾向があります。むちうちなら事故から3か月前後、骨折なら6か月前後がひとつの節目で、この時期に保険会社から治療状況の確認を兼ねた連絡が入ることが多くなります。また、通院の間隔が空いてきたときや、整形外科ではなく整骨院中心の通院になっているときも、保険会社は治療の必要性が薄れたと判断しやすくなります。事故から数か月が経ち、通院ペースが落ち着いてきたころは、そろそろ連絡が来るかもしれないと想定して準備しておくと安心です。
ここからが本題です。保険会社から治療費打ち切りの打診を受けたら、次の順番で対応していきましょう。
まず大前提として、電話で打ち切りを打診されても、その場で了承しないでください。
「わかりました」と答えてしまうと、症状固定に同意したものとして扱われるおそれがあります。返答は、主治医に確認してから折り返すという形で保留にするのが基本です。
次に、主治医に対して、今後も治療を続ける必要があるかどうかを率直に聞いてみてください。
主治医が治療継続を必要と考えているなら、その旨を保険会社に伝えます。可能であれば、治療継続の必要性を記載した意見書や診断書を書いてもらいましょう。交渉の材料として強く働きます。
あわせて、普段の診察で症状をどう伝えているかも見直しておきたいところです。痛みが続いているのに、診察のたびに「だいぶ良くなりました」と答えていると、カルテには改善傾向としか残りません。どの部位が、どんな動作のときに、どの程度つらいのかを毎回具体的に伝え、記録に残してもらうことが、後の交渉や後遺障害の申請で効いてきます。
主治医の見解をもとに、保険会社に一括対応の延長を求めます。
交渉の際に伝えたいポイントは次のとおりです。
保険会社側も、医師の判断と対立してまで打ち切りを強行することには慎重になります。1か月単位で延長が認められるケースは珍しくありません。電話でのやり取りは、日時と担当者名、話した内容をメモに残しておくと、あとで話が食い違ったときの備えになります。
交渉しても打ち切られてしまった場合でも、治療そのものをやめる必要はありません。健康保険を使って通院を続けましょう。
交通事故のケガでも健康保険は使えます。加入している健康保険組合や市区町村に、第三者行為による傷病届を提出すれば手続きは完了です。自由診療より自己負担額を大幅に抑えられるので、経済的な負担を減らしながら治療を続けられます。
このとき立て替えた治療費は、領収書をすべて保管しておいてください。治療の必要性が認められれば、示談の際にまとめて請求できます。
任意保険会社が支払いを止めても、加害者側の自賠責保険に直接請求する方法があります。これを被害者請求といいます。
自賠責保険の傷害部分の上限は120万円ですが、この枠内であれば、任意保険会社の判断とは関係なく治療費や慰謝料を受け取ることができます。手続きには一定の書類が必要になるため、次に触れる弁護士に依頼するとスムーズです。
打ち切り交渉が難航している、あるいは後遺症が残りそうだと感じているなら、早めに弁護士へ相談しておくと安心です。
弁護士に依頼するメリットは、交渉を任せられることだけではありません。慰謝料の計算基準が、保険会社の提示する任意保険基準から裁判所基準(弁護士基準)に切り替わるため、受け取れる金額が大きく変わることが多いのです。たとえばむちうちで6か月通院した場合の入通院慰謝料は、任意保険基準では60万円前後の提示になることが多いのに対し、裁判所基準では89万円が目安とされています。この差は後遺障害慰謝料になるとさらに広がります。
費用が心配な人は、自分や家族の自動車保険に弁護士費用特約が付いていないか確認してみてください。特約があれば、多くの場合300万円まで弁護士費用が補償され、自己負担なく依頼できます。
対処法とあわせて、避けたい行動も知っておきましょう。以下の行動は、後の補償額に直接響いてきます。
なかでも多いのが、通院をやめてしまうケースです。打ち切り後に通院記録が途絶えると、症状固定の時点で症状がなかったとみなされかねません。治療の必要性を感じているなら、通院は続けるのが鉄則です。
症状固定と診断されたら、主治医に後遺障害診断書の作成を依頼します。この書類は後遺障害等級認定の審査でもっとも重視されるもので、記載内容の充実度が認定結果を左右します。
自覚症状の欄には、痛みやしびれの部位、頻度、日常生活や仕事への影響を、できるだけ具体的に伝えて書いてもらってください。検査結果や可動域の数値が漏れなく記載されているかも、あわせて確認しておきましょう。
申請方法には、加害者側の保険会社に任せる事前認定と、自分で自賠責保険に申請する被害者請求の2つがあります。
事前認定は手間がかからない反面、どのような資料が提出されたかを自分で把握できません。一方の被害者請求は、書類を自分で揃える必要はあるものの、有利な資料を追加できるため、認定の可能性を高めやすい方法です。
むちうちの場合、認定されるのは14級9号や12級13号が中心です。14級でも後遺障害慰謝料は裁判所基準で110万円、12級であれば290万円が目安となり、これに逸失利益が加わります。認定の有無で最終的な受取額が数百万円単位で変わることも珍しくないため、申請は慎重に進めてください。
症状固定は、治療を続けても改善が見込めなくなった状態を指す言葉で、判断するのは保険会社ではなく主治医です。保険会社の治療費打ち切りは一括対応の終了にすぎず、あなたが治療を受ける権利まで失われるわけではありません。
打ち切りを打診されたら、その場で承諾せず、主治医の判断をもとに延長交渉を行い、それでも難しければ健康保険で通院を続けましょう。後遺症が残りそうなら、早めに弁護士へ相談し、後遺障害等級認定に向けた準備を進めることが、適正な補償を受け取るための近道になります。
痛みが残っているのに治療を終わらされそうだと感じたときこそ、慌てずに、ここで紹介した手順をひとつずつ確かめてみてください。
この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
広島弁護士会所属/弁護士登録番号 第57063号
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。
平田弁護士について
おりづる法律事務所にお寄せいただいたご相談をもとに、交通事故の解決事例をご紹介します。
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