高齢の母が歩行中に事故|高次脳機能障害で5級認定・約5200万円を獲得
「高齢で後遺障害の立証は困難」→5級認定・約5200万円
広島市中区の70代女性が歩行中の事故で高次脳機能障害を負い、ご家族の陳述と専門医の検査で後遺障害5級の認定を得て、約52…
70代女性/広島市中区
事例を読むcolumn
弁護士コラム
交通事故でケガをすると、通院や入院のために仕事を休まざるを得なくなります。会社員なら給料が減り、自営業なら売上が落ち、家事を担っている人なら家のことが回らなくなる。こうした経済的な損失を補うのが休業損害です。
ところが実際の示談交渉では、休業損害の金額が本来より低く提示されていたり、主婦だからという理由で項目ごと省かれていたりするケースが目立ちます。計算のルールを知らないまま提示額を受け入れてしまうと、数十万円単位で損をすることも珍しくありません。
この記事では、休業損害の基本的な考え方から、会社員・主婦・自営業・パートといった働き方ごとの計算方法、請求の際に押さえておきたいポイントまでをまとめました。自分の場合はいくらになるのか、読みながら当てはめてみてください。
弁護士に相談することで、解決への道筋が見えてきます。
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休業損害とは、交通事故によるケガの治療のために仕事を休み、その結果減ってしまった収入に対する補償です。入通院慰謝料が精神的な苦痛への補償であるのに対して、休業損害はあくまで収入の減少という財産的な損害を対象にしています。両者は別の項目なので、どちらか一方しかもらえないということはありません。
対象になる期間は、事故の日から症状固定の日までです。症状固定後に残った症状による収入減は、後遺障害逸失利益という別の枠組みで扱われます。
休業損害の計算式は、働き方が違ってもすべて共通です。
休業損害 = 1日あたりの基礎収入(日額) × 休業日数
つまり金額を左右するのは、日額をいくらと見るか、休業日数を何日と数えるか、この2点に尽きます。このあと働き方ごとに説明するのは、主に日額の出し方の違いです。
同じ事故、同じケガでも、どの基準で計算するかによって休業損害の額は大きく変わります。基準は3つあります。
自賠責の日額6,100円は最低限の補償という位置づけなので、実収入が高い人ほど裁判所基準との差が広がります。たとえば日給1万2,000円の人が90日休んだ場合、自賠責基準だと54万9,000円ですが、裁判所基準なら108万円になります。
保険会社が最初に提示してくる金額は、任意保険基準か自賠責基準で計算されているのが普通です。提示額を見て少ないと感じたら、どの基準で計算したのかを確認してみてください。なお、裁判所基準での支払いを保険会社が被害者本人との交渉で受け入れることはまれで、実際には弁護士が代理人に付いた段階で計算基準が切り替わるのが一般的です。
給与所得者の場合、事故前3か月分の給与をもとに日額を出すのが一般的な方法です。
日額 = 事故前3か月の給与合計(税込・手当込み) ÷ 90日
たとえば3か月の給与合計が90万円なら、日額は1万円です。ここでいう給与は手取りではなく総支給額で、残業代や通勤手当なども含めて計算します。
なお、90日で割ると実際の出勤日1日あたりの単価より低くなるため、実稼働日数で割る主張が認められる場合もあります。3か月の出勤日数が60日なら、日額は1万5,000円という計算です。保険会社は90日で割った数字を出してくることが多いので、交渉の余地がある部分といえます。
会社員が見落としやすい点を整理しておきます。
有給休暇については、給料が減っていないのだから損害はないと考えがちですが、本来別の用途で使えたはずの休暇を治療に充てた以上、その分は損害として扱われます。
家事労働には収入がありませんが、法律上は経済的な価値のある労働と評価されています。そのため専業主婦や専業主夫であっても、ケガで家事ができなくなった期間については休業損害を請求できます。
日額の算出には、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(賃金センサス)に載っている女性労働者の全年齢平均賃金を使います。この平均賃金は毎年更新されており、2026年3月に公表された令和7年の数字では年額約437万円、日額に直すと約1万2,000円です。前年の令和6年は年額約419万円、日額約1万1,500円でした。どの年の数字を使うかで金額が変わるため、示談時点で最新のものを確認してください。
主夫の場合も、男性の平均賃金ではなく女性の平均賃金を用いるのが実務の扱いです。
パートやアルバイトをしながら家事も担っている兼業主婦の場合、パートの実収入と賃金センサスの平均賃金を比べて、高いほうを基礎収入にします。両方を足し合わせるわけではありません。
パート収入が年100万円前後であれば、ほとんどのケースで賃金センサスのほうが高くなります。パート先の給与明細だけをもとに計算された提示額は、本来の額より大幅に低い可能性があると考えてください。
家事従事者の場合、会社員のように会社を休んだ日数という明確な記録がありません。そのため休業日数の認定には幅があります。
実務では、次のような考え方が用いられています。
保険会社は通院日数のみを休業日として計算してくることが多いのですが、ケガの内容によっては、通院していない日も家事に支障が出ているはずです。実際の生活で何ができなかったかを具体的に説明できるようにしておくと、交渉で有利に働きます。
自営業者の日額は、事故の前年の確定申告書に記載された所得金額を365日で割って算出します。
日額 = 前年の所得金額 ÷ 365日
前年だけ極端に売上が落ち込んでいた、あるいは開業したばかりで通年の実績がないといった場合は、直近数年の平均や事故後の売上推移など、実態に近い資料をもとに主張することもあります。
ここでいう所得は、売上から必要経費を差し引いた金額です。ただし青色申告特別控除は実際に支出した経費ではないため、控除前の金額をもとに計算できます。
さらに、事務所の家賃や従業員の給与、リース料など、休業中も支払い続けなければならない固定経費についても、事業を維持するために必要と認められれば損害に上乗せできます。売上がゼロになっても出ていくお金は変わらないためです。
自営業者の休業損害で難しいのは、確定申告の所得が実際の収入より低く申告されているケースです。節税のために経費を多めに計上している人は少なくありませんが、その場合、申告書の数字で計算すると休業損害も低くなってしまいます。
実際の収入が申告額より多いことを、預金通帳や取引先との契約書、請求書の控えなどで立証できれば、実収入をもとに計算できる可能性はあります。ただし立証のハードルは高く、認められないことも多いのが実情です。確定申告をしていない場合はさらに難しくなり、賃金センサスの平均賃金の一部を基礎収入とする形で妥協せざるを得ないこともあります。
自営業者の場合、通院日以外にも、ケガの影響で仕事を受けられなかった、納期を延ばした、現場に出られなかったといった日があるはずです。通院日以外の休業を主張するには、スケジュール帳や取引先とのやり取り、断った案件の記録などを残しておくことが重要になります。
パートやアルバイトで働いている人は、基本的に会社員と同じ扱いです。事故前3か月の収入合計をもとに日額を出し、実際に休んだ日数をかけて計算します。
ただしパートの場合、勤務日数が週2〜3日と少ないことが多いため、90日で割ると日額がかなり低くなります。この場合は実稼働日数で割る方法が実態に合っており、交渉で主張する価値があります。
たとえば3か月の収入が24万円で、出勤日数が36日だった場合を比べてみましょう。
休業日数が30日なら、前者は約8万円、後者は約20万円と、2倍以上の差になります。
また、前述のとおり、家事も担っているパート主婦であれば、賃金センサスの平均賃金を基礎収入にできる可能性があります。パート収入が少ないからといって、休業損害まで少額で済ませる必要はありません。
事故当時に働いていなかった人は、原則として休業損害を請求できません。減る収入がないためです。
ただし例外もあります。事故の時点で就職先が内定していた、就職活動中で採用の見込みが具体的にあった、といった事情があれば、働き始めるはずだった日以降の収入減が補償される場合があります。学生も同様で、アルバイトをしていればその収入をもとに計算できますし、卒業後の就職が決まっていて入社が遅れたなら、その期間の損害を主張できます。
休業損害は、収入と休業の事実を書類で証明できなければ認められません。働き方別に、揃えておくべき書類をまとめます。
いずれの場合も、通院した日と日数がわかる診断書や通院記録は共通して必要です。書類の準備に時間がかかるものもあるので、治療と並行して早めに集め始めておくと、示談の段階で慌てずに済みます。
最後に、金額の計算とは別に知っておきたい実務上のポイントを3つ挙げておきます。
ひとつ目は、休業損害は示談を待たずに請求できるということです。生活費に困る被害者のために、任意保険会社から内払いとして毎月支払ってもらう運用があります。収入が途絶えて困っているなら、担当者に内払いを申し出てみてください。
ふたつ目は、休業の必要性を医師に認めてもらうことです。医師が就労可能と判断している期間に自己判断で休んだ場合、その分の休業損害は認められにくくなります。仕事を休む必要があるなら、その旨を診察時に伝え、診断書に記載してもらいましょう。
3つ目は、長期間にわたる休業の場合、期間が進むにつれて認められる割合が下がる可能性があることです。むちうちなどの軽傷で何か月も全休を続けると、その全期間が損害として認められるとは限りません。復帰できる部分から少しずつ仕事に戻る姿勢を見せたほうが、結果的に認められる金額は大きくなる傾向があります。
休業損害は、日額と休業日数のかけ算で決まります。会社員なら事故前3か月の給与から、自営業なら前年の申告所得から日額を出し、主婦や主夫は賃金センサスの女性平均賃金を使って計算します。パート勤務の主婦であれば、実収入と平均賃金の高いほうを選べる点も忘れないでください。
保険会社の提示額は自賠責基準や任意保険基準で計算されていることがほとんどで、裁判所基準との差は決して小さくありません。提示された金額を鵜呑みにせず、この記事の計算式に当てはめて自分の適正額を把握したうえで交渉に臨むことが、正当な補償を受け取るための第一歩です。
この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
広島弁護士会所属/弁護士登録番号 第57063号
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。
平田弁護士について
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