高齢の母が歩行中に事故|高次脳機能障害で5級認定・約5200万円を獲得
「高齢で後遺障害の立証は困難」→5級認定・約5200万円
広島市中区の70代女性が歩行中の事故で高次脳機能障害を負い、ご家族の陳述と専門医の検査で後遺障害5級の認定を得て、約52…
70代女性/広島市中区
事例を読むcolumn
弁護士コラム
後遺障害の申請をして数か月、届いた結果は非該当だった。あるいは14級9号と認定されたものの、日常生活に支障が出るほどの痛みやしびれが残っているのに、最も軽い等級で本当に妥当なのかと疑問が消えない。こうした状況で多くの人が気にするのが、認定結果はもう覆せないのか、ということです。
結論からいえば、結果には異議申立てという不服申立ての手段が用意されており、内容次第で等級が変わることがあります。ただし、単に納得できないと訴えるだけでは結果は動きません。
この記事では、非該当や14級という結果が出る背景、異議申立ての仕組みと具体的な進め方、そして認められる可能性を高めるために何を揃えるべきかを整理しました。次の一手を決める材料として役立ててください。
弁護士に相談することで、解決への道筋が見えてきます。
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後遺障害の等級を審査しているのは、保険会社でも医師でもなく、損害保険料率算出機構という組織です。各地にある自賠責損害調査事務所が、提出された書類だけをもとに判断します。被害者本人と面談することも、実際に身体を診ることもありません。
つまり審査の結果は、書類にどれだけ説得力のある情報が載っていたかで決まります。非該当という結果は、後遺症がないと断定されたというより、提出書類からは後遺障害と認めるだけの根拠が読み取れなかった、という意味合いのほうが近いといえます。
むちうちなどの神経症状で認定される等級は、14級9号か12級13号のどちらかです。同じ痛みやしびれでも、12級は画像や検査によって症状を裏づける他覚的所見がある場合、14級は所見はないが症状の存在が医学的に説明できる場合、と区別されています。
この2つの等級で最も差が出るのが逸失利益です。逸失利益は、後遺症によって働く能力が落ちた分の将来の収入減を補償するもので、労働能力喪失率と喪失期間をかけて計算します。
年収400万円の人で試算すると、14級では5%×5年分で90万円前後、12級では14%×10年分で480万円前後となり、5倍前後の開きが出ます。慰謝料の差も加わるため、等級がひとつ違うだけで最終的な賠償額は数百万円変わります。非該当であれば、これらはすべてゼロです。
なお、12級13号を目指す場合は、MRIで神経の圧迫が確認できるといった画像所見に加えて、その所見と症状の出ている部位が神経の走行として矛盾しないこと、神経学的検査の結果がそれと整合していることまで求められます。画像に何らかの異常が写っていても、年齢による変化と区別がつかなければ他覚的所見とは評価されません。14級から12級への引き上げは、非該当から14級への引き上げよりも立証のハードルが高いと考えておいたほうが現実的です。
認定結果の通知書には、その判断に至った理由が書かれています。異議申立てを考えるなら、まずこの理由を読み解くところから始めてください。
非該当や14級にとどまるケースで、理由として挙げられやすいのは次のような点です。
このうち複数が重なっているケースは珍しくありません。どの理由が決定的だったのかを見極めることが、次に何を補うべきかの判断につながります。
異議申立ての準備に入る前に、初回申請までの通院状況を客観的に振り返っておくことをおすすめします。認定理由の多くは、通院の実態や検査の有無に関わっているからです。
具体的には、事故から症状固定までの通院日数と間隔、整形外科と整骨院の通院比率、MRIなどの画像検査を受けた時期、神経学的検査を受けたことがあるかどうかを、月ごとに書き出してみてください。通院が途切れた期間があれば、その理由も整理しておきます。仕事の都合や転院の手続きなど、症状が軽かったわけではない事情があるなら、それを説明できる材料になります。
この作業をすると、書類上の弱点がはっきり見えてきます。弱点がわかれば、医師に依頼する意見書の内容や、追加で受けるべき検査も自然と絞り込まれていきます。
異議申立ては、自賠責保険に対して等級の再審査を求める手続きです。押さえておきたい基本事項をまとめます。
回数に制限がないとはいえ、同じ資料で繰り返しても結果は変わりません。損害保険料率算出機構の公表資料によると、異議申立てのうち等級が変更されるのは全体の1割程度です。裏を返せば、多くの申立てが新しい根拠のないまま行われているということでもあります。
なお、自賠責への請求には時効があります。後遺障害部分については症状固定日の翌日から3年で、異議申立てもこの期間内に行う必要があります。認定結果を受け取ってから悩んでいるうちに時間が過ぎてしまわないよう、早めに動き出してください。
最初にやるべきことは、通知書に書かれた理由の分析です。何が足りないと判断されたのかを特定し、それを補えば認定基準を満たせるのかを検討します。
たとえば他覚的所見がないことが理由なら、追加の検査で所見が得られる余地があるか。通院実績の不足が理由なら、実際の通院状況が正確に伝わっていたか。理由によって打つ手はまったく異なります。
あわせて、非該当から14級を目指すのか、14級から12級を目指すのかを明確にしてください。目標とする等級の認定要件を確認し、それに照らして不足している資料を洗い出すのが基本の流れです。
初回の申請を相手方の任意保険会社に任せていた場合、どの資料がどのような形で提出されたのかを自分で把握できていないはずです。
異議申立ての段階では、自分で資料を揃えて自賠責保険会社に直接提出する方法に切り替えることができます。保険会社任せでは、こちらに有利な資料を追加したり、提出資料の内容を精査したりといったコントロールが利きません。認定結果を動かしたいのであれば、自分で提出する形に変えたほうが確実です。
異議申立ての成否を分けるのは、初回になかった新しい資料です。認定理由に対応する形で、次のようなものを準備します。
とくに医師の意見書は、書類審査という性質上、非常に重い意味を持ちます。ただし主治医に丸投げしても、審査の観点に沿った記載にはなりません。認定理由のどの部分に対する見解が必要なのかを整理したうえで依頼することが大切です。
医学的な資料に加えて、被害者本人が症状の経過を時系列でまとめた陳述書を添付することも有効です。
事故直後にどんな症状が出て、それがどう推移し、現在どのような場面でどの程度の支障があるのか。仕事や家事で具体的に何ができなくなったのか。医師のカルテには残りにくい生活上の困難を、本人の言葉で補います。診断書の記載と矛盾しないよう、事実に即して淡々と書くのが基本です。
集めた資料をもとに、異議申立書を作成します。決まった様式はありませんが、盛り込むべき要素は決まっています。
感情的な訴えや、保険会社への不満は書いても審査には影響しません。認定理由に対する反論を、資料を引用しながら論理的に組み立てることに集中してください。提出後は、結果が出るまで待つことになります。この間、症状が続いているなら通院も継続しておいてください。症状固定後の通院は治療費の請求対象にはなりにくいものの、症状が現在も続いていることを示す記録として、審査での評価に影響することがあります。
異議申立てを経ても納得できる結果が得られなかった場合、残された道は2つあります。
ひとつは、自賠責保険・共済紛争処理機構への紛争処理申請です。自賠責保険の支払いをめぐる紛争を扱う専門機関で、医師や弁護士などで構成される審査会が、自賠責保険会社の判断が適正かどうかを審査します。費用はかからず、調停結果には保険会社側が従うことになっています。ただし利用できるのは原則1回限りで、審査は書面のみで行われます。異議申立てとは別の組織が判断するため、視点が変わることを期待できる制度です。
もうひとつは、訴訟で裁判所に後遺障害の有無と程度を判断してもらう方法です。裁判所は自賠責の認定結果に拘束されず、証拠にもとづいて独自に判断します。自賠責では非該当だった症状が、裁判で後遺障害として認められた例は少なくありません。ただし時間と費用がかかり、医学的な立証を自分で行う必要があるため、弁護士に依頼して進めるのが現実的です。
手続きの途中でつまずきやすい点を、いくつか挙げておきます。
まず、異議申立てをする前に示談を成立させないことです。示談書には通常、これ以上の請求をしないという清算条項が入っています。等級を争いながら示談を先行させてしまうと、後から等級が上がっても追加の賠償を求められなくなります。
次に、初回の申請と同じ資料で申し立てても結果は動かないということです。新しい検査を受ける、医師に意見書を依頼するといった準備には時間も費用もかかりますが、これを省いた異議申立ては、時間を消費するだけに終わります。
最後に、異議申立ての準備は専門的な判断を要するということです。どの検査を受ければ所見が得られるか、医師にどのような観点で意見書を書いてもらうか、認定理由をどう読み解くかは、後遺障害の審査基準を理解していなければ判断できません。一度目の異議申立てが事実上の勝負どころになるため、準備の段階で弁護士に相談しておく価値は十分にあります。
後遺障害の非該当や14級という結果は、書類審査で根拠が足りないと判断された結果であり、後遺症そのものが否定されたわけではありません。異議申立ては回数の制限も費用の負担もない一方で、等級が変更されるのは全体の1割程度にとどまります。
結果を動かすには、通知書に書かれた認定理由を正確に読み解き、それに対応する医学的な資料を新たに揃え、被害者請求の形で論理的に反論することが必要です。異議申立てで変わらなければ、紛争処理機構への申請や訴訟という道も残されています。
等級ひとつで賠償額は大きく変わります。示談を急がず、時効に注意しながら、確実な準備を整えてから申し立ててください。
この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
広島弁護士会所属/弁護士登録番号 第57063号
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。
平田弁護士について
おりづる法律事務所にお寄せいただいたご相談をもとに、交通事故の解決事例をご紹介します。
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